2018年10月01日

[読書]三木裕和監修、鳥取大学附属特別支援学校著(2017)『七転び八起きの「自分づくり」知的障害青年期教育と高等部専攻科の挑戦』今井出版



なぜ?


特別支援学校の高等部専攻科の取り組みについての本だからです。
高等部卒業後の学びの場としての専攻科は、数が少ないです。
福祉サイドから学びの作業所、福祉型専攻科と青年期の学びを支える場所が少しずつ増えてきています。

青年期教育をどのように考えるのか?
また、専攻科として積み上げた10年を振り返る形で、何を学ぶのかということについて考えていきたいと思い、本書を読みました。


どんな本


本書は、知的障害特別支援学校の高等部専攻科における取り組みについてまとめられたものです。三部構成になっており、実践、調査、理論としてまとまっています。

目次は下記の通りです。

第1部 実践編 高等部専攻科における青年期教育の実践(国公立初の高等部専攻科誕生から10年
高等部専攻科の教育
青年期の「自分づくり」を支援する授業
5領域の実践例
変容していく姿 それぞれの自分づくり)
第2部 調査編 修了生への悉皆調査からみる専攻科での青年期教育の意義と今後の課題
第3部 理論編(専攻科設置の源流と経緯
教育年限延長の要求運動と青年期教育の意義
知的障害と青年期教育―「9・10歳の発達の節目」に挑む人たち)
メッセージ(教職員OB
修了生
修了生保護者)




専攻科の教育課程は、青年期の自分づくりを目指すために、「くらし」の学習を土台とし「教養」「研ゼミ」「労働」「余暇」が土台になっています。10年間の取り組みの中で、「くらし」の学習が土台になっていったということが成果として描かれています。

「七転び八起きの自分づくり」の学習スタイルは何事もまずやってみることから始め、自分を客観的に振り返り再チャレンジするものです。

生徒たちの自主性を尊重し、計画・立案、実行し、振り返って問題を解決するプロセスを大事にし、これを繰り返すことで自分づくりが進むものとして考えられています。

例えば、調理学習では、同じ料理を取り上げ、実践・振り返りを通じて、問題解決のプロセスとして取り上げています。


◯失敗からの学びを重視する。(成功のためのおぜんたてはしない)
◯失敗への気づきを促す。
P35


失敗からの学びを重視する。というのは、なかなか難しいです。
どうしても、教師という立場だと支援してできるようにするという考え方が強いので、待つことに抵抗感があるかもしれません。

失敗したからこその学びというものがあるはずです。失敗することを保障する。
失敗することで、どんなことに気をつけなければいけないのか?ということが、自分の問題として考えることができます。
そして、それは教師が指摘して分かるよりも、貴重な学びの場になっています。


青年期教育




専攻科での経験が、成功体験による自己肯定感を高めることに止まらず、うまくいかなかったときの解決方法を考える過程を繰り返すことで、人との関わりの中で、自分を客観的に見られるようになってくる。このような一端自分崩してをしてからの、自分づくりへの成長過程を「自分らしさの再構築」または、「価値感の再構築」と考えています。
P47

青年たちの生涯をみすえて、何を青年期の教育課題としていくかを真剣に考える必要があるでしょう。その際、自分づくりの主体は青年本人であることを忘れてはいけません。自分の手で自分の殻を壊していく「自分くずし」を経て、自分の手で「自分づくり」を行うという青年期の発達課題の特徴を理解したうえで、その営みを組織化していく取組みこそ「青年期教育」であると言えるでしょう。
p152



「自分くずし」「自分づくり」の過程として、青年期を位置づけています。
高等部から入学した生徒たちの中には、二次障害を抱えていることがあります。自分の殻から抜け出ることから時間がかかります。
青年期に必要な時間の問い直しという点からも青年期の学びそのものを問い直す点が求められています。

問い直しという点から、三木さんは、ある生徒指導の先生からの生徒が自己理解できていないことの相談のエピソードから、青年期の自己理解について取り上げています。

自己理解という言葉そのもののもつ意味とは何か?
自己理解という名のもとに、「劣弱性の自覚」に追い込んでいるのではないか?

さらには、学会のシンポジウムで提案された他者理解についても批判的に取り上げています。


知的障害青年において、彼らがもっとも言いたい台詞は「でも、同じ人間のはずだ」であろう。障害の自己理解という命題は、こう言い直すべきだ。彼らに必要な自己理解は劣弱性の自覚ではない。「人間としての誇り」の獲得なのだと。P178


「人間としての誇り」の獲得を目的に青年期教育が目指してきたものとして、本書を読み直すと、「自分づくり」の意味合いが変わってきそうです。

おわりに


数少ない高等部専攻科の取り組みについてまとめられた本です。

青年期という時期にあたって、高等部での授業づくりについても問い直しの必要性に迫られた本です。

「自分づくり」を大切にする取り組みとは何か?
自己理解と安易に使ってしまっているがその本質とは何か?
改めて考えさせられました。


澤田淳太郎・野波雄一・三木裕和(2017)「鳥取大学附属特別支援学校専攻科10年の成果と課題―修了生の悉皆調査から―」『人間発達研究所』第30号P62〜78
http://www.j-ihd.com/bhd30-05.pdf


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posted by pmastyle at 17:29 | Comment(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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