教育という問題を語るときに、まず考えなければいけないことは、ほぼすべての人(1979年に養護学校義務制になったため、1979年以前の障害をもつ人は学校教育を受けていない人もいます。)が学校教育を受けてきたという事実です。
これまでに受けてきた学校教育が体験として残っているため、そこを基準に物事を考えることがあります。
それは、悪いことではありません。
そして、この事実によって誰もが積極的に参加して考えることができる可能性をもっています。
今回は、立場が異なりますが、教育に携わる二人の考え方を提示する場でした。
今更ながら、特別支援学校では、知的生産の技術を教えているのか?という問いについて考えてみたいと思います。
特別支援教育の立場から
知的障害特別支援学校に従事する一個人として書いてみたいと思います。
障害の種類が変われば、条件も異なることから、限定して書かせていただきます。
まず、梅棹忠夫先生の『知的生産の技術』の定義を確認すると、以下のようになります。
知的生産というのは、頭をはたらかせて、なにかあたらしいことがら──情報──を、ひとにわかるかたちで提出することP9
1 頭をはたらかせる
2 なにかあたらしいことがらを
3 ひとにわかるかたちで提出する
この3つが揃って、知的生産になります。
結論から述べると、知的生産の技術は教えています。
ただし、3番目の「ひとにわかるかたちで提出する」ために、特別支援学校の教師は、教育内容、教材・教具という中で、工夫したり、配慮をしたりしています。
しかし、それが本人が授業後に活用しているものもあれば、していないものもあります。
具体的な例として、自分が取り組んできたことを書きます。
国語の授業
詩の活動は、自分を表現する活動です。思い浮かんだこと、イメージを言葉に置きかえる抽象性の高い活動になります。
国語で短冊カードを使った詩の実践を行いました。
1 テーマについて考える。「水と聞いて何を思い浮かべる?」
2 短冊に書く。
3 教師が質問する。「どんな場所?」「どんな大きさ?」「誰がいるの?」「どんな音がする?」
4 2と3の活動を繰り返す。
5 短冊を並べ替える。
6 詩の完成。
単語で書く生徒もいれば、びっしり書く生徒もいます。
質問に対しての答えを短冊に書く活動は「あたまをはたらかせる」「あたらしいことがらを」になります。
並べ替える活動は、「あたまをはたらかせる」ことによって、「あたらしいことがら」としてのリズムや表現、文脈が生まれて、「ひとにわかるかたちで提出する」作品になります。
この授業後の生活に、これらの技術が結びついているかと問われると難しいです。
[特別支援教育]短冊を並べ替えて「詩」を作る国語の授業: pmastyle http://pmastyle.seesaa.net/article/412466055.html
[特別支援教育][知的生産]短冊を使った詩の授業における並び替え時の支援: pmastyle
http://pmastyle.seesaa.net/article/447661172.html
朝の会・帰りの会
言葉を話すことが難しい生徒も在籍しています。
iPhoneのメモ帳を使った実践を行いました。
・事前にメモ帳に伝える内容を書いておく。
・二本指で画面上部からスワイプすることで、音声読み上げをするように設定しておく。
自分で文章を組み立てて、iPhoneを操作し、発表することができるようになりました。
「頭をはたらかせる」「なにかあたらしいことがらを」までは、自分の力でできましたが、「ひとにわかるかたちで提出する」ために、この生徒には、iPhoneというテクノロジーが必要でした。
[iPhone][iPad][特別支援教育]プリインストールアプリの「メモ帳」でことばの表出が難しい子どもに表現させたい: pmastyle
http://pmastyle.seesaa.net/article/421576648.html
iPhone、iPadなど情報機器を使った実践
ここからは、自分の実践ではありませんが、ICT(Information and Commnication Technology)について書いていきます。
上記に示したように、「ひとにわかるかたちで提出する」ためにテクノロジーを活用することで、潜在能力を発揮することができます。
「魔法のプロジェクト」では、こうしたテクノロジーを使って、1年間の事例研究を行なっています。
ここでは、Evernoteを使ったり、ロイロノートというプレゼンテーションアプリを使ったりした事例が報告されています。
テクノロジーで何を学ぶか、テクノロジーを活用してどのようなことができるようになったのかなど学ぶべき点はたくさんあります。
ここには、「ひとにわかるかたちで提出する」ための知的生産の技術があるのではないでしょうか。
魔法のプロジェクト | 障がいを持つ子どものためのモバイル端末活用事例研究 http://maho-prj.org/
[読書][特別支援教育][iPad]中邑賢龍(2015)『学校の中のハイブリッドキッズたちー魔法のプロジェクトを通して見えたICTと子どもの能力・教育の未来ー』こころのリソースブック出版会: pmastyle http://pmastyle.seesaa.net/article/422647310.html
おわりに
かーそる2016年11月号、その後のブログ記事を読んだときにはわかなかった疑問が、あらためて「ひびきあい」を読んで、自分自身でも問い直す視点があったのではないか?と考えました。
今回は、過去記事をもとに書きましたが、特別支援教育と『知的生産の技術』というテーマは、まだまだ深められそうな予感がしています。
さらに、近年、教育分野で叫ばれている「アクティブ・ラーニング」ともつなげられるのでないかなとも考えています。
授業で学んだことを生活にむすびつける『知的生産の技術』の探究を課題とし、取り組んでいきたいと考えています。
[読書] かーそる7月号 #かーそる: pmastyle http://pmastyle.seesaa.net/article/452530711.html
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ひとに分かるかたちで提出する技術をまなぶ機会として、特別支援学校では、ひと工夫されているという点が、勉強になりました。短冊をつかって、質問しながら短い文章をかき、並びかえるという授業の記事も興味深く読みました。
実践していらっしゃる方のこういったお話に触れることができたことは、本当に宝物のように感じています。
作者からコメントを頂けると,嬉しいです。