2016年03月02日

[読書][特別支援教育]成田孝・廣瀬信雄・湯浅恭正(2015)『教師と子どもの共同による学びの創造ー特別支援教育の授業づくりと主体性ー』大学教育出版




なぜ購入したか?


先日の記事でも紹介したように、公開研究会での物販において出会ったからというのが理由です。

[特別支援教育] 160123山梨大学教育人間科学部附属特別支援学校の公開研究会に参加して: pmastyle
http://pmastyle.seesaa.net/article/432950319.html

著者の3人は、日本特殊教育学会のシンポジウムにおいて授業研究を22年続けて企画しているメンバーです。自分も8年くらい前からシンポジウムに参加していましたので、絶対に購入すべき本だと思っていました。

また、著者の廣瀬信雄先生が山梨大学教育人間科学部附属特別支援学校の校長時代の公開研究会で、成田先生、湯浅先生は授業に関する講演会を行っています。

この講演会に参加していたので、論文・書籍にならないかなと思っていました。

どんな本?


本書は、それぞれの立場から、特別支援教育の授業づくりについて論じています。授業論とは何かということが検討されていますので,自身の授業のあり方を見つめ直すことができる本になっています。

本書の構成は下記のようになっています。

まえがき(湯浅恭正)
第1章 子どもの「主体性」を問い直す(成田孝)
第2章 教師の「主体性」を問い直す(廣瀬信雄)
第3章 授業づくりのリアリティを求めて(湯浅恭正)
第4章 特別支援教育の授業づくり・その魅力と展望(成田孝・廣瀬信雄・湯浅恭正)
あとがき(成田孝)


まえがきと詳しい目次については下記のHPで確認することができます。
http://www.kyoiku.co.jp/upload/m_books/935/tatiyomi.pdf

成田孝(鹿児島国際大学福祉社会学部児童学科教授)


成田氏は以前特別支援学校の教員として働いていました。

粘土の授業づくりについて本を書かれています。



この本でも紹介されていた題材の条件や支援の構造の表がでてきます。授業づくりへの思いが伝わってきます。徹底的な授業研究論となっています。

本書においてはこの授業分析について主体性との関係で述べられています。

それが「させる活動」から「する活動」への提起です。

子どもを教師が期待する姿に早く到達させるために,指示や命令を多く出して「させる」のではなく,教師が子どもにふさわしい活動内容を徹底的に研究しながら,最小限の支援によって,子どもが主体的に「する活動」になっているかが厳しく問われる。
P5

表面的な現象は誰にでも見えるが,子どもの内面を洞察する難しさ,活発な活動と深い学びは必ずしも比例しないこと,目に見える表面的な現象だけで判断することは危険であることを思い知らされる。
P10

授業は徹底的な題材(教材)研究を通して,教師が「教えたいもの」を子どもが「学びたいもの」に転化していく作業である。「教えたいもの」は,題材(教材)ではない。「教えたいもの」を,題材(教材)と勘違いしていないだろうか。題材(教材)を通して,「教えたいもの」が何なのか,その授業構想なくして,「学び」は創造できない。
授業は,題材(教材)を子どもが持っている能力で無難にこなしたり,題材(教材)に付随していることが簡単に分かったり,できるようになることではない。
題材(教材)には,教師や集団によって揺さぶられながら,子ども自身の手で何とか課題をクリアして,子どもが持っている能力の一段高みに子ども自身が登り,成就感・達成感・充実感ができる内容が要求される。いわゆる,ヴィゴツキーの「発達の最近接領域」である。
じっくり待ちながら,励まし,ともに喜びながら,難しい課題に教師と子どもが共同で立ち向かうのである。子ども自身が,教師とともに難しい課題の奥に分け入っていくのである。
P11


本書には実践例や授業参観記録など授業づくりに参考となる内容が豊富に含まれています。

廣瀬信雄(山梨大学大学院総合研究部教育人間科学域教授)



本章で紹介されたコラムについては,公開研究会の時に参加者にメールで配信・当日配付されたニュースレターがベースとなっています。

教師による子どもの見方・捉え方,授業への向き合い方(姿勢)について主体性の観点から述べられています。

「意味の相互理解」を重視する授業は,教師の主体性によって成立する。それと同時に,学びと発達の当事者としての子どもは,授業づくりにおいて「受身」の存在ではなく,「対象」でもない。子どもは発達への潜在的な可能性を持った,文化世界の共有者であり,授業づくりにおける教師の共同生活者である。子どもも発達する主体,言いかえれば学びの主役となる。
P70

授業づくりの当事者としての振り返りは,次の諸点である。
(1)教育内容(教科内容)を一方的に与えようとし,子どもの側に立った学習経験のプロセスを無視していないか。
(2)教師がいっしょにやって見せること,いっしょに考えてくれることを,子どもたちは訴えていないか。
(3)もうすでに子どもたちが習得してしまっている知識・技能を反復させる授業を安易に設定していないか。
(4)新たなことを学習することへの期待,不安,子どもの気持ち,とまどいを考えているか。
(5)1種類の考え方だけでなく,多様な方法を用意しているか。
P74

考える力やこどばの力,それらに支えられる人間行動は,自分一人でつくりあげたものではない。だからこそ,学びの過程で,仲間,同僚,クラスメイトは多い方がよい。個別ブースをつくり,個別指導が特別支援教育のスタイルだと勘違いしてはならないのである。
P78


[読書]広瀬信雄(1997)『がんばってね せんせい』田研出版: pmastyle http://pmastyle.seesaa.net/article/433371380.html

湯浅恭正(中部大学現代教育学部教授)


特別支援教育と主体性の議論を生活指導,教育方法学的な見地から,さらに成田氏・廣瀬氏の議論をふまえた論考としてまとめられています。

しかし,多様な体験がどう障害のある子どもの経験として意味を持ち,生活のストーリーに位置づくのかが忘れられて,つい体験に伴うスキルや約束の指導に重点を置いた授業になってしまう。その意味では,生活単元学習が陥りやすい体験主義とスキル形成への傾斜は,今日もなお見逃せない問題点だと言える。
P110

以上の二つの切り口に共通するのは,指導者である教師(集団)が,障害児の自分づくりの世界と学びの履歴づくりに参加し,また障害児も活動の主体として学びの履歴づくりに参加するという考え方である。
P111

それは第一に,教材の背景にある教科の捉え方,また前の節で検討した生活単元学習や作業学習をどう教育実践に位置づけるかの問いかけが脆弱だからである。この位置づけに問われるのは,授業を通して育てたい子ども像の探究である。その探究は,学習指導要領等を中心に制度化され,定式化された視点を前提にしつつ,教師の創造的な営為としての教育実践とそれを裏づける知の豊かさを通して進められるものである。
P122

教材解釈を支える第二のポイントは,授業過程における教師の指導と結びつけて新たに教材を解釈することにある。
P123

人間が生きている世界(モノ・コトガラ)の見方・見え方をどう指導するのか,障害や発達に応じつつ,障害児の教科指導の意義を改めて問い直してみたい。先に指摘したunter(媒介にして)とは教科という枠組みだけではなく,子どもたちのものの見方や考え方を媒介にすることを含んでいる。世界の見方・見え方は子どもたちの内面をくぐって多様に存在する。それだからこそ,集団の場を通して見方・見え方を交流する授業が意義を持つ。
P128


いっけん当たり前のように過ごしてきてしまいがちのことですが,「問い直す」ことを問いかけてくれています。

[読書][特別支援教育]インクルーシブ授業研究会(編)(2015)『インクルーシブ授業をつくるーすべての子どもが豊かに学ぶ授業の方法ー』ミネルヴァ書房: pmastyle
http://pmastyle.seesaa.net/article/420086517.html

[読書][特別支援教育]湯浅恭正・新井英靖・吉田茂孝(2014)『特別支援教育の授業づくりキーワード』明治図書: pmastyle
http://pmastyle.seesaa.net/article/420744275.html

[読書]日本教育方法学会編(2014)『教育方法学ハンドブック』学文社: pmastyle http://pmastyle.seesaa.net/article/411798850.html

[特別支援教育][読書]『教育方法学ハンドブック』の障害児教育分野に執筆された著者のPDF論文まとめ: pmastyle
http://pmastyle.seesaa.net/article/412240155.html

[読書]湯浅恭正・大阪保育研究所編(2014)『障害児保育は「子ども理解」の場づくり』かもがわ出版: pmastyle http://pmastyle.seesaa.net/article/411472961.html

まとめ


三者三様の深い授業論が読めるのは素晴らしいです。ハウツー本ではありません。マニアックな本かもしれませんが,自己を見つめ直す名著だと思います。





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