2014年09月11日

[読書]森博俊・障害児の教科教育研究会(1993)『障害児のわかる力と授業づくり−新しい教科教育への挑戦』ひとなる書房





本書は「子どもたちが文化にふれ,考え,わかる授業をどのようにつくったらよいであろうか」を追求した教育実践の記録である。
1993年に発行された本であるが,この教育実践記録には,これからの授業づくりにおいても生かされるような内容が示唆されている。また,このような歴史があったからこそ,授業づくりが発展してきたのだということを忘れてならない。

本書は,4部構成となっている。
目次
はじめに(編者)P3
T 障害の重い子どもたちに文化を―東京・いぶき学級の実践―
 一 文化に参加し「わかる」授業を求めて(杉山敏夫)P16〜P53
 二 授業づくりの中で育つ(桜井佳子)P54〜P66

U 討論=授業「海」を読む(有働浩子,桜井佳子,杉山敏夫,船橋秀彦,森博敏・森下芳郎)P67〜P93

V 「わかる」力を育てる授業の探求
 一 物語教材で子どもの世界を広げる(永田三枝子)P96〜P119
 二 数の学習をあそび文化としてつくりだす―算数の授業づくり―(有働浩子)P120〜P146
 三 ”授業を創る”にこだわる,僕の授業観(船橋秀彦)P147〜P161
 四 「多動児」のわかる力と豊かな授業(森下芳郎)P162〜P180

W 教科教育のあらたな発展を求めて(森博俊)

おわりに(障害児の教科教育研究会 一同)


1 なぜこの本を読もうと思ったか


・タイトルにある「わかる力」ということをどのようにとらえて実践してきたのかを追求した実践記録であること
・その中で取り上げられている授業づくりの視点の一つに「授業のストーリー化」があり,それはどのようにして作られていったのかを知りたかったこと

2 「海」の授業づくりにかかわる視点




いぶき学級の授業づくり

@心を通わせ合える接し方を
Aイメージを育み,見通しを持ちやすい迫り方を
B子どもと共に授業を
C子どもたちの望ましい生理的リズムつくりを
D集団で子どもたちの評価を
P21

・全体に物語性があって,子どもたちに見通しを持ちやすい迫り方であること
・子どもへの働きかけに十分な「問いと答えの間」があること
・生理的な快感情の表出から「頭がゴロンゴロンと動く」のような認知的思考をくぐった快感情の表現へと発展する(見通しの持てる,質の違う笑顔を表現する)こと
・先生に寄り添いながら友だちに意識を向け,人を豊かに求めて止まない気持ちが持て,子どもが「もっとしてほしい」という要求の表出を取り込めること
・先生が「こんな子どもに育ってほしい」というメッセージ性や,年齢にふさわしいテーマ性を持ちながら,「子どものこの表情がみたい」「このことをわかってほしい」と,個性を発揮しながら,ついついのめり込めること
・繰り返していても,子どもや教師にとってその都度発見や発展性があり,子どもの予測を越えた反応による混乱も授業にとりこみ,指導案をつねに子どもと共につくり変えていけること
・「子どもたちと共有できる『優れた文化』とは何か」を追及できること
P36





授業づくりの視点そのものは,色あせたものでなく,これからの授業づくりにおいて大切な視点であること。また,重度の子どもたちへの授業づくりのみではなく,「文化」の視点をふまえて,子どもと共に授業をつくりかえていくことは,どの子どもに対しても必要な授業づくりの視点になりうると考えられる。




どんな子どもにも集団が必要だ,人と豊かに関わり合うことは欠かせない,どんな子どももわかって・変わる,教師集団もわかって・変わる,という思いこみの強さが実践を支えてきたような気がします。私たちのまわりは,いろんなものがあふれ,豊かさの中の貧困,上からの統制の強化という文化状況ではないでしょうか。このような状況に抗していくために,私たちが子どもたちに「なんのために」「何を」「どのようにして」伝えていくべきか,ということにこだわりながら,課題・教材・教具を追及していくべきなのでしょう。
障害の重い子どもの授業に立ち向かうためには,教師が集団的に仮説としての指導案を持つことがたいせつだし,自分の思いをぶつけあいながら論議できる仲間が必要です。その際に必要なことは,普遍的な教育目標へのこだわりと,頑固なまでの「子どもは変わる」という思いこみではないでしょうか。
事実はたいせつです。でも,それを意味づけし,実践の価値について評価してくれる専門家や研究会が欠かせません。そのなかで,教師も実践に対して自信を持つことができるようになってくるし,一人ひとりが主人公になって学習活動を創造・発展させていけるのではないでしょうか。
P52

授業をしたあと,いつも「子どもたちにとって,この授業はどのような意味があったのか」と悩みます。ことばでも点数でもはかれない子どもたちの歩みをきちんと分析するのはたいへんです。常に誰かがつきっきりで観察したとしても不十分なのです。複数の目で見て,話し合い,評価すること。そして科学的なデータを集めたり,記録を継続してとり,それらの資料をもとに評価することがたいせつだと思います。
しかし,なかなか「評価」というのは難しいものです。それは私自身の子どもを評価する視点が,「できるようになった」ということにとらわれているからだと思います。「〜できるようになる」という目に見えることのみでははかれないこと,すなわち,「より生きいきと学ぶ」「より豊かに人と関わりながら学ぶ」「より価値の高いものにふれる」などの一見目に見えないもののなかに,じつはたいせつな力があるのだと思います。
P58

そして,最後に,授業や子どもの進歩についての自分の評価や思いは「仮」のもので,いつでもつくっては壊すことのできる自分でありたいと思っています。
P59





授業づくり・評価においては,一つひとつの事実を複数の教師で解釈し意味づけていくことの必要性が説かれている。行動分析が支配的な現代において,「できた」ことのみにとらわれず,目に見えない数値では評価できないことを大切にしていくことはこれからの授業づくりにおいても大事にしていきたいところです。










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posted by pmastyle at 00:27 | Comment(3) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
2014年にこの本を読むとは・・・。
森先生の若いころの本ですね。
森先生、杉山さんの本では「群青社」の「心をみつめて」が、そのごの時代背景も意識しながらの教育実践が語られています。
Posted by 加茂 at 2014年11月27日 00:10
2014年にこの本を読むとは・・・。
森先生の若いころの本ですね。
森先生、杉山さんの本では「群青社」の「心をみつめて」が、そのごの時代背景も意識しながらの教育実践が語られています。
Posted by 加茂 at 2014年11月27日 00:11
ありがとうございます。
ご紹介頂いた本は一度読んでおります。
また再読してみたいと思っております。

たいしたことは書いていませんが、その時の記事です。
http://pmastyle.seesaa.net/article/304437442.html

Posted by pmastyle at 2014年11月27日 08:13
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